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積極財政で全てうまく行くという幻想

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積極財政とは、主に国債を発行して財政支出を増やし、経済を刺激しようとする政策です。この政策は、経済を活性化するための財政出動という名目で支持されやすく、特に「ばら撒き」という言葉を避けて「積極財政」と呼ばれると、響きがよく、肯定的に受け取られがちです。しかし、現実には積極財政がもたらす効果には疑問が残ります。

例えば、積極財政の一環として国が不必要なインフラ整備や修理を行うことがあります。壊れていない橋を「壊れそうだから」という理由で修理し、その費用がGDPに加算される。これは単に雇用を生み出すための作業であり、経済成長や景気回復と呼べるかどうかは疑問です。

そもそも、不景気の原因の一つは、20世紀に比べて生活が便利になり、多くのモノやサービスがすでに揃っているため、消費意欲が低下している点にあります。欧米の先進国でもGDP成長率は鈍化しており、積極財政によってお金をばら撒いたところで、消費や景気が急激に改善するわけではありません。実際、コロナ禍で日本が実施した10万円の給付金も、多くの人が生活費や貯金に回す結果となり、期待された消費拡大の効果は見られませんでした。

また、現在の社会では無駄遣いが散見されます。例えば、オンライン診療が普及すれば医療費を削減できるにもかかわらず、従来の対面診療が続けられています。その他にも、無駄なODA(政府開発援助)や、利用者が少ない公的施設の維持、人口の少ない地域への過剰なインフラ整備など、無駄な支出が多く見られます。

特に地方においては、1万人にも満たない村に電気・ガス・水道・下水道を完備し、道を整備する必要があるのか疑問です。むしろ、都市部に人口を集中させ、農村部では自然に即した生活を提供する方が、無駄のない持続可能な政府支出が可能ではないでしょうか。

災害復興に関しても効率の悪さが目立ちます。例えば、能登半島の災害復興費用は1088億円ですが、避難者数は約4600人です。一人当たりに換算すると、2300万円以上の費用がかかっている計算になります。これだけの資金があるなら、避難者に直接渡した方が、効率的で彼らの生活再建に役立つかもしれません。しかし、災害支援はセンシティブな問題であり、効率を追求する議論は難しいという現実があります。

積極財政が正しいとされる背景には、経済成長が絶対的に善だという思い込みがあるからです。しかし、経済成長しないことが必ずしも悪いわけではありません。大量消費、大量生産の時代が終わり、すでに便利な物に囲まれている現代では、買う必要がないからこそ経済成長が鈍化しているだけです。昭和時代と比べても、現代の生活水準は大幅に向上しています。家電製品やインフラが整っている現代では、最低賃金であっても生活は快適で、可処分所得や自由な時間が増えています。

積極財政で経済成長を追求するよりも、政府支出の選択と集中を行い、低所得者層の可処分所得や時間を増やす方が現実的です。例えば、食費や家賃を政策で大幅に抑えれば、手取り10万円でも十分な可処分所得が確保できます。

最後に、積極財政ばかりが注目され、緊縮財政が悪とされる風潮には疑問を感じます。むしろ、緊縮財政こそが無駄な公金の支出を抑え、減税を実現する道ではないでしょうか。積極財政派の主張にばかり耳を傾けるのではなく、無駄のない財政運営を目指すための議論が必要です。

一部では、緊縮財政派が財務省の言いなりだという論調がありますが、実際にはむしろ積極財政の方が政府支出が増えるため、官僚の権限が大きくなり、彼らの思い通りに進む可能性が高いのではないかと感じます。これは、いわゆる「パーキンソンの法則」に通じるものであり、今の日本はまさにその状況に陥っています。官僚機構は、予算が増えるほどその規模や影響力が拡大し、無駄が生じやすくなります。

積極財政派は、インフレ率が2%までであれば国債を発行しても問題ないと主張しますが、インフレ率2%というのはすべての商品価格を平均しての話です。実際、生活に不可欠な食費や家賃はその平均を超える上昇を見せており、特に低所得層には厳しい負担をもたらしています。デフレ時代ですらエンゲル係数(食費の割合)は下がらず、近年ではコンビニのパンの価格も、わずか1.02倍ではなく1.7倍にまで値上がりしています。それにもかかわらず、積極財政の主張が多くを占めている現状は非常に危ういものです。

参考までに、世界の歳出(対GDP比)ランキングを見ると、かつて高福祉国家として知られたスウェーデンは現在、フランスやイタリアよりも歳出が少なくなっており、むしろ歳出を削減しています。同様に、ニュージーランドやマレーシアも歳出を抑えています。一方で、アメリカはリーマンショックやコロナ禍の際に大規模な財政出動を行いましたが、それ以降はその大規模な支出を継続していません。対して日本は、リーマンショック、東日本大震災、コロナといった危機時に増加した歳出を、その後も減らさず継続させています。このままでは次の危機が発生した際にも同様の対応が繰り返され、歳出が増え続ける状況に陥る可能性があります。

こうした状況にもかかわらず、積極財政派は「日本は緊縮財政だ」と訴え続けていますが、実際には歳出比率は非常に高く、昭和時代と比べても大幅に増えています。この現実を見ずに積極財政を主張するのは問題だと感じています。

難しい事は置いておいて単純に、無駄な公共事業や施設が増える現状も懸念すべきです。車がほとんど走らない道路を作ったり、誰も本を読まない図書館を建設することが、正しい政策としてまかり通っているのは、現代社会の歪みだと思います。

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