勝利と成功体験
1. 弱小少年サッカーチーム
子どもの通うサッカーチームがあまりにも試合で大敗してしまうため、彼らが勝てるチームになる方法を調べました。子どもたちのモチベーションが下がってしまわないかも気になります。育成年代には、厳しい指導を行うチームの方が成長につながるのではないかと考えたりもしました。
自分が小学生時代に所属していた野球チームも思い出しました。隣のチームは楽しさを重視した伸び伸びとした環境だったのに対し、私のチームは体罰もあり、厳しい指導が日常でした。スパイクを履くたびに辛い思いをしたものですが、そんなチームだからこそ過去に全国大会にも出場するような強いチームであり、まさに「勝利至上主義」を貫くチームでした。
2. 勝利至上主義はいい事、悪い事?
ネットで「チーム 弱い」と検索すると、「チームは弱くてもいい」とする意見と「勝利こそが大事」とする意見が見つかり、議論が分かれていることがわかります。
勝利至上主義の主張としては以下のようなものがあります:
- 競技において、試合で勝つことを目標にするのは当然である。
- 子どもが勝ち負けを覚えないまま育つと、大人の社会で勝ち負けが前提の環境に出たときに苦労する可能性がある。
- 「勝つ」という目標を持つことで、それが達成された際に成功体験となる。
例えば、[Abemaの記事]にも似た主張が見られ、私自身も調べる前はこの考え方に賛同していました。多くの人も、程度の差こそあれ勝利至上主義を支持しているのではないでしょうか。勝利による成功体験は貴重で、全国大会などで強豪と対戦する経験は素晴らしいものだと思っていました。
一方で、勝利至上主義への反論もあります:
- 勝利を目指すと練習量が増え、疲労が蓄積し、本人のモチベーションが下がることがある。
- 週6日の練習で確かに上達し、試合に勝つことが増えるかもしれませんが、「楽しい」からではなく「勝つため」に練習することになり、長期的にはやる気を失ってしまう恐れがある。
- 親やコーチからの勝利期待が高まることで、楽しさよりもプレッシャーやストレスが上回ってしまうかもしれない。
さらに、成長段階に応じたスキルや戦術の問題も指摘されています。
小学生レベルで「勝つ」ために最適化されたプレースタイルや戦術が、中高生以降で通用しなくなることもある。
たとえば、少年野球ではダウンスイングでゴロをサード方向に転がすとミスを誘いやすいため有効ですが、上の年代では通用しなくなります。
少年サッカーでも、大柄の子どもをセンターフォワードに置き、ひたすら彼にボールを送る戦術が通用する場合がありますが、中高生や大人になるとこの方法は無力化されやすいです。
走り方も同様で、小学生の最適な走法と大人の最適な走法は異なるとされています。
例えば、全国中学校駅伝の上位選手と大学の箱根駅伝上位選手の顔ぶれが異なるという統計もあり、子ども時代に特化した体の使い方がその後の成長を阻害する可能性も指摘されています。サッカーでも、U-17では日本が強くても、成長してからの代表戦では結果が伴わないことがあるように、成長期の戦術が後の成長に影響することが考えられます。
3. 勝利、強いが目玉商品
どの親も、弱いチームより強いチームで子どもが活躍し、勝つ姿を見たいと思うものです。クラブチームも商業的に成功するため、強いチーム作りへのプレッシャーがかかります。結果として、ほとんどのクラブチームが競うように練習日を増やし、「練習した者勝ち」のような風潮が生まれます。練習量が増えればチームは強くなり、全国大会へ進出すればチームの知名度が上がり、さらに多くの子どもたちが入会を希望する人気チームへと成長するでしょう。
しかし、このような環境が行き過ぎると、周りの大人が子どものやる気を奪い、身体を酷使させてしまう原因となります。行き過ぎた勝利至上主義が過剰な練習量を生み、結果的に子どもの可能性を潰すという本末転倒な状況を招いているチームや家族も少なくないでしょう。
こうした状況の中で、子どもを酷使する大人たちは決して悪気があるわけではなく、むしろ正しいと思って子どものために行動しているのだと思います。
4. 熱量が子供より高い父親のブログ
勝利至上主義で子どもを育成しているブログを見つけました。ブログを書いているのは、週7日、毎日練習か試合があるという熱心な「パパコーチ」。子どもの成長記録や試合結果をブログで発信していることからも、その熱量が伝わります。ブログのタイトル通り「勝利至上主義」で、競技において勝利を追求しなければ意味がない、という主張がされています。
確かに一理ありますが、その熱量と方針では子どもが疲れ切ってしまわないかと心配になります。読み進めると、案の定、子どもは中学卒業とともにサッカーを辞め、別のクラブ活動に取り組んでいるようです。
このお子さんは小学生時代にサッカーの英才教育を受け、トレセンにも選ばれてエリート選手の仲間入りを果たしていました。しかし、高学年になって「実力はあるのにやる気が感じられない」との記載があり、内心ではサッカーを楽しんでいなかったのではないかと思います。親の期待に応えるために頑張っていた「やらされ感」が伝わってきました。
「パパコーチ」ならではの事情もあるのでしょう。毎日サッカー漬けで、家に帰ってもサッカーから離れられない環境を考えると、子どもにとっては少し過酷に思えてなりません。
それでも、こうした考え方がプロを夢見る親の中で一般的になのかもしれません。
イチロー、室伏広治、ソンフンミンなど父親からの英才教育を受けてトップアスリートになったイメージが強く、英才教育=練習量が多いという事で統計的なデータに基づかずに練習量を増やせばトップアスリートになれると勘違いしている親も多いのではと思います。
5. 練習量
週に水曜日と土曜日が練習日ですが、グラウンドの水はけが悪く、さらに土曜日には授業参観などの学校行事が入るため、実質の練習は週1.5日程度です。一方、他の地元チームは週に5日ほど練習しており、練習試合ではその差が大きく現れ、試合で大差をつけられることが多くなっています。
サッカー教育が進んでいるとされるスペインの育成年代の練習量を調べると、彼らの方がむしろ日本よりも少なく、週に3日プラス試合1日が一般的だそうです。また、夏休みと冬休みにそれぞれ2か月ほどクラブの活動休止期間も設けられているようです。
週1.5日は少ないと感じる一方で、小学校低学年であればこの程度の練習量が適しているのかもしれません。まだ勝ち負けに大きく左右される年齢ではないので、負け続けることでモチベーションが下がることもありますが、そういう時こそ「勝ち負けよりも楽しむことが大事だ」と教えるのも一つの方法でしょう。
調べたところ、育成年代では特定の競技に絞らず、様々な運動を経験させることが良いとされています。川遊びでバランス感覚を鍛えたり、鉄棒にぶら下がって普段使わない筋肉を使うなど、多様な動きが「脳のチャンク」と呼ばれる神経回路の発達に良い影響を与えるそうです。
例えば、サッカーで速いクロスボールをトラップするような場面が将来的に出てきた時、小学生の間に野球のフライをキャッチする経験やライナーキャッチのような反射神経がトラップの応用につながるかもしれません。
ただし、卓球や体操のような競技は幼少期からの専門的な練習が効果的であるとされ、逆に陸上競技のような基本的な動きが主体のスポーツは後から始めても問題ないとされています。
6. 自主的な行動
勝利至上主義の強豪チームでは、週5日以上の練習・試合が組まれることが多く、選手たちは自主練習をする前に既に疲労が溜まってしまい、オーバーワークで自主練の効果も限定的になりがちです。
一方で、チームの練習量が少ない場合は試合で負けることが多くなりますが、その分自主練習をした際に効果が現れやすく、選手のモチベーション向上にもつながりやすいと考えられます。
自主練の効果が現れやすければ、それが「自己効力感」につながり、努力するのが好きな子供に育つのではと期待しています。
プロ選手を輩出しているある有名監督によると、プロを目指すような子どもたちは自分で練習内容を考え、自らの課題を見つけて解決し、改善する習慣が身についているそうです。
7. 勝利以外での成功体験
勝利の成功体験も大きなものですが、勝利以外でも成功体験は探せばたくさんあるのではないかと思います。たとえば、1年ほどの努力を重ねて達成できるような目標が良さそうです。
東大合格者を多く輩出した佐藤ママは、小学校低学年の子どもにスイミングスクールへ通わせ、メドレーができるようになるまで続けさせるそうです。これは、1日で習得できるものではなく、長期的にコツコツと練習を重ねて達成するため、成功体験を味わいながら中長期的な努力も身につく、という点で非常に納得できます。
個人的には、けん玉検定もこうした成功体験に適している気がします。例えば「日本一周」や「飛行機」などの技は、1日どれだけ練習してもすぐにはできませんが、毎日練習を続ければ1~2年で達成可能です。簡単な技であれば1日でできるものもあり、難易度に柔軟性があるので初心者から上級者まで楽しむことができ、程よい達成感を伴う小さな成功体験を味わえるでしょう。
上手く行った時と失敗した時がはっきりしていて、失敗したら下に玉が落ちてすぐわかるし、上手く行った時は、手の感触とカシャっていう音でわかりやすく快感にもつながると思います。
この点はスイミングよりも優れているのではと思います。
何より、今までちょっとでも思い通りにならなかった事があるとすぐに癇癪を起こす子供がけん玉でミスをしても癇癪を起こさず、たんたんと練習しているので既に大きな効果になっていると思います。
検定◯級と超長期的に努力すれば達成できる程よい目標があり、できない事に対して、課題を見つけてコツを掴み、その課題を解決して目標達成するというサイクルの期間もちょうどいいと思います。
学校でもけん玉をもっと推奨してみてもいいかもしれないです。
8. 受験も中長期的に頑張る目標としてはいい
受験も中長期的に頑張る目標としては適していると思います。多くの親御さんが大学受験をそうした目標と捉えている中、ネットではなぜか佐藤ママが批判されることが多いようです。
小・中・高・大の受験を通じて成功体験を積み重ねることは良い面もあり、実際、多くの子どもたちにとって中長期的に取り組める目標となっているのも事実でしょう。
ただし、受験には以下のようなデメリットもあります。
- 費用と時間がかかる
- 成否によって将来が左右されやすく、プレッシャーやストレスがたまりやすい
- チャンスが限られている
そもそも個人的には大学、高校、中学も不要で小学校も民営化にして、小学校卒で働けれるようになればいいのにとさえ思っています。
そのため、我が家では受験を中長期の目標や成功体験とする予定はなく、塾や受験とも縁遠い環境です。
9. どう育てていくか
自分の子どもにどう育ってほしいかを考えると、中長期的な目標がないと素行不良や危ない誘惑への道に行く可能性が高くなると思うので、高校生くらいまでサッカーを続けることを一つの目標にしてもらえたら嬉しいです。
子どもの意思を尊重しつつも、ある程度の方向性は示していく必要があるかもしれません。理想像を子どもに伝えたり、少しずつ誘導していくことがどのような影響を及ぼすのかも調べておくと良いかもしれないです。
ただ、親の熱量が子どもを上回ると、かえってプレッシャーやストレスになりかねないため、サッカーの外では他の運動にも取り組ませる事もいいのではと思います。サッカークラブの練習が週1.5日では運動量が少ないので、週1で体操や野球など、別のスポーツも取り入れるのも良さそうです。
たまたま、入ったサッカークラブチームが弱小チームで心配してましたが、いろいろ調べた結果、このまま弱小チームに在籍してて、問題なさそうに思いました。
弱小だけども、ゆくゆく子供が自主的に練習して、一回でも試合で勝つことができた時は、大きな成功体験になるのではと期待しています。
週7で練習している子供が全国大会に出るよりも感動や、快感が味わえるのではと思っています。
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