インフレ率「3%までなら国債発行OK」という幻想 〜積極財政論のカラクリ〜
最近よく耳にするのが、積極財政派の学者や政治家が口にする
「インフレ率が3%までなら国債を発行しても問題ない」という主張です。
一見すると理屈が通っているように聞こえます。しかし、生活者の実感からすれば「詐欺みたいな話」に近い。なぜなら、実際の物価上昇は統計が示す“平均値”以上に、私たちの生活を直撃しているからです。
統計上のインフレと、国民の体感インフレの乖離
CPI(消費者物価指数)は「平均的な家計」の支出をもとに算出されます。
しかし、ここに落とし穴があります。
教育や医療は公的制度の影響が大きく、政策によって「無償化」や「自己負担軽減」が行われると、統計上はそのまま 物価の低下要因 として反映されます。
おにぎりが2倍でも、CPIはゼロ?
CPIの基本式は以下の通りです:
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:各品目の支出比率(ウエイト)
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:当期の価格
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:基準年の価格
例:
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おにぎり:基準年100円 → 当期200円(2倍)
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高校授業料:基準年 40万円 → 当期 0円(無償化)
もし家計の支出比率が「おにぎり10%、教育10%」だった場合:
つまり、生活必需品のおにぎりが2倍になっても、教育費ゼロの影響でインフレ率全体は「ほとんど変わらない」または「ゼロに見える」ことになります。
エンゲル係数は爆上がり
おにぎりのような食費は家計の必需支出。
それが2倍になれば、エンゲル係数(家計に占める食費割合)は急上昇します。
つまり、統計上は「インフレ率が上がっていない」とされても、庶民の実感は「生活が苦しい」「食費に追われる」なのです。
国債発行と「見せかけの安定」の悪循環
さらに問題なのは、積極財政派がこれを根拠にすることです。
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政府が国債を発行して教育費や医療費を無償化
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CPI上ではインフレ率が押し下げられ、数字上は「安定」
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「まだインフレ率は上がっていないから大丈夫」と再び国債を発行
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しかし現実には食費や生活必需品が高騰し、庶民の生活は悪化
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それでも統計上のインフレ率は低く見えるため、財政拡大が繰り返される
このように「インフレ率を抑えているように見える構造」が、国債発行の歯止めを失わせる危険な悪循環になっているのです。
公金が動けば、誰が得をするのか?
積極財政派は「もっと国債を発行して、景気を刺激すべき」と主張します。しかし、この流れの中で確実に利益を得るのは政府と官僚機構です。
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公金の流れが大きくなるほど、補助金や公共事業の分配権限は官僚の手に集中する
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政策研究や委託調査の名目で、学者やシンクタンクも“国の仕事”に依存していく
結果として、積極財政論者が「国民のため」と言いながら、実際には政府の財布を大きくする方向に加担し、自らもその利権構造に組み込まれていくのです。
緊縮財政と増税論のねじれ
一方で「緊縮財政=増税」と結びつける論調もよく見かけます。
しかし、これは本来おかしな話です。
緊縮財政とは支出を抑える方向性のことであり、必ずしも増税を伴うわけではありません。むしろ、無駄な歳出をカットすれば、その分減税の余地が広がるはずです。
ところが現実の政治では「増税して歳出も維持する」ケースが目立ちます。つまりこれは緊縮ではなく「官僚に都合のいい財政運営」なのです。
まとめ 〜誰のための財政か?〜
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インフレ率3%までOK論は、生活実感を無視した数字遊び
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おにぎり2倍でも教育無償化でCPIゼロに見える歪んだ構造
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エンゲル係数は急上昇し、庶民の生活はますます苦しくなる
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その結果、国債発行が正当化され、悪循環が続く危険性
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緊縮=増税は虚構であり、むしろ緊縮こそ減税のチャンス
結局のところ、問題は「財政の規模」ではなく、
国債を使って誰が潤い、誰が苦しむのかです。
庶民の暮らしを犠牲にして「インフレ率はまだ大丈夫」と言うのは、欺瞞に過ぎません。
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