日本の税制はパーキンソンの法則
──パーキンソンの法則が生み出した“税と給付の迷宮”──
日本の税制は、世界でも屈指の複雑さを誇る。
所得税、住民税、消費税、法人税、固定資産税に加え、たばこ税、酒税、自動車重量税、入湯税、森林環境税、環境性能割、復興特別所得税……。
そのうえ控除の種類は数百、給付金は毎年新設され、申請書類や証明書は膨大だ。
なぜここまで複雑になったのか?
結論を言えば、日本の税制は**「シンプルにするインセンティブが誰にも無い」状態で進化し続け、
典型的なパーキンソンの法則(仕事は、与えられた時間と組織の規模に応じて無限に増え続ける)」が発動している**。
その結果、「わざわざ複雑」に設計され続けている面がある。
■ 消費税の免税を廃止すべき理由:もはや“特別措置の塊”
消費税は本来「シンプルな均一税」を目指して導入された。
しかし現実はまったく逆方向に進んでいる。
▼ 消費税が複雑化している理由
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輸出企業には税還付(TOYOTAなど大企業は巨額還付を受けている)
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外国人旅行者には免税対応(書類作業・店舗の負担も大きい)
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国内向けには軽減税率(8%)と標準税率(10%)の二重構造
そもそも海外旅行者が「免税だから日本に来る」わけでもないし、TOYOTAのような輸出企業は還付がなくても十分利益を上げている。
消費税の特例は、制度を複雑化し、事務コストと利権の温床にもなっている。
ならいっそ、消費税免税を廃止し、税体系を根本的に見直す方が合理的ではないか?
■ 固定資産税は“住民票と連動”させ、累進構造にすべき
日本の不動産税制は「資産を多く持つほど相対的に得をする」構造になっている。
あなたの提案は非常に本質的で、次のようにまとめられる:
▼ 新しい資産税の案(例)
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住民票に紐づけて12㎡までは非課税(最低限の生活空間)
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それを超えた部分には累進課税(贅沢に応じて税負担増)
これは都市経済学的にも合理的で
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住環境の公平性を確保
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投機目的の不動産保有抑制
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富裕層の“寝かせている資産”に適切に課税
が実現できる。
しかも、今のような不公平な「不動産収入は寝ていても入る」という構造にも歯止めがかかる。
■ 不要な“目的税”は撤廃すべき
環境税、復興税などは、本来「税体系全体で賄える」ものである。
▼ 問題点
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名前をつければ国民が反対しにくい
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臨時と言いながら恒久化する
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税体系をより複雑にする
復興や環境の費用は、所得税・法人税でまとめて処理すれば十分。
目的税は事務コストが高い割に税収効率が悪く、メリットよりデメリットの方が大きい。
■ 入湯税・たばこ税・酒税はすべて消費税に統合可能
たばこ税・入湯税・酒税を個別に残す必要性は今やほとんどない。
消費税に「加算税率」として組み込めば、制度は一気に統一化・簡素化できる。
例:
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たばこ:消費税+健康加算10%
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酒:消費税+嗜好品加算3%
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温泉:消費税+観光加算1%
個別の税務処理も、地方自治体の税務担当も、すべて大幅削減が可能。
■ 日本の給付金・控除は“複雑化の象徴”
子ども手当、住宅ローン控除、医療費控除、扶養控除、各種加算金、補助金、助成金…。
しかも、事務作業のための
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証明書
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申請書
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添付書類
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調査
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入金処理
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審査
が大量に発生し、公務員の仕事が永遠に増え続ける仕組みになっている。
▼ 控除一本化のメリット
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住民票と所得データで自動計算
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年末調整や確定申告大幅削減
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給付金事務の大部分が不要に
子ども手当を給付するより、扶養控除の復活の方が遥かにシンプルで公平。
住宅ローン10%控除も、「消費税0%」にすれば制度ごと不要になる。
■ 日本の税制が複雑になった最大の理由
ここまで来ると、ひとつの法則が浮かび上がる。
パーキンソンの法則
仕事は、与えられた組織の規模に応じて無限に増え続ける。
税金を複雑にすればするほど――
✔ 新しい部署ができる
✔ 新しい担当者が必要
✔ 新しい管理システムが必要
✔ 新しい会計・調査・審査が生まれる
✔ 公務員の数が増える
✔ 役所の予算も増える
そして複雑化を止める動機を誰も持たない。
これが、いまの日本の税制の根本的な問題である。
日本型の“見えない汚職”:複雑化による権益の温存
海外の汚職は、しばしば「担当者が不当な利益を自分のポケットに入れる」わかりやすい構図で語られる。
しかし日本の場合はもっと巧妙で、もっと見えにくい。
日本の腐敗は、
“制度をあえて複雑にして仕事を増やす” という形で進行する。
複雑になればなるほど——
・新しい部署が必要になる
・担当者が増える
・予算が増える
・監督組織も増える
・天下り先が増える
つまり、組織そのものが膨張することが利益になる仕組みができあがっている。
しかも現場の公務員は真面目で、生産性も高い。
だからこそ、この“制度の複雑化による腐敗”が表に出にくく、メディアでも大きく報じられない。
だが、こうした現象はまさにパーキンソンの法則そのものだ。
「仕事は、組織が存在する限り無限に増え続ける」
誰かが強制的に止めない限り、事務も制度も部署も永遠に膨張し、その結果、国民のコストだけが延々と増えていく。
表に見えないこの構造こそ、日本特有の“静かな汚職”なのだ。
■ 結論:税制と社会保障を“シンプルな4本柱”に戻すべき
最適な税の姿は、次の4つに統合された形だと思う。
① 所得税(累進)
② 法人税(利益課税)
③ 資産税(累進固定資産税)
④ 消費税(単一税率 or 廃止)
そして
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各種控除 → 所得税控除へ集約
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給付金 → 控除または定額給付に一本化
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消費税の特例 → 全廃
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目的税 → 原則廃止
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社会保険料 → 税への統合も検討
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役所の事務 → 大幅縮小
これにより、現在の「複雑で不公平でコストが高い税と給付の仕組み」は劇的に改善される。
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