なぜ中国は怖い国と思わされているのか
■ 冷戦期の成功モデルの幻影を今も抱いている
第二次世界大戦後、日本は「アメリカとの同盟」によって安全保障を確保し、「技術・経済立国」を実現し、高度経済成長を遂げた。冷戦時代は、明確に「西側 vs 東側」という構図が国際社会を支配しており、日本は西側の一員として、世界の民主主義・自由市場体制の恩恵を受けてきた。
しかし21世紀、特に最近の10〜20年で、世界はもはや冷戦のような単純な二極構造ではない。複数の大国が、地域の安全保障・経済影響力・外交関係を巡って「多極的」「複雑的」にせめぎ合っている。
そのなかで、日本は「昔ながらの同盟依存型」「片側ベット型」の姿勢を続けながら、同時に「中国=悪/米国=正義」のような単純な構図に縛られ、「親中」「媚中」と批判されることを恐れて、自ら選択肢を狭めている。だが、それは非常に危険で、愚かな振る舞いになる可能性がある。
以下、その理由を整理する。
■ 「中国批判=常識・正義」はプロパガンダの一面を持つ
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中国政府による人権侵害や監視体制、軍拡、台湾・南シナ海への圧力など、批判されるべき重大な問題は多数ある。しかし、これらの情報がインターネットやSNSを通じて「編集・強調」される過程で、「中国=全て悪、米国=全て善」という一面的ストーリーが流通しやすくなる。
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現代のウェブサービスやSNSの多くは米国や西側資本が関与しており、結果として「米国側に有利」「中国を悪と見る」情報が拡散されやすい構造がある。知らず知らずのうちに、多くの日本人は「反中」「嫌中」世論の流れに取り込まれ、ある意味で集団ヒステリーや排外主義、社会的圧力、つまり“新たなファシズム”的雰囲気をともなった偏向したナラティブを受け入れている可能性がある。
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つまり、「中国の非難」はそれ自体が事実であっても、その「語られ方」「流布のされ方」が厳密に検証されず、政治的な力関係を背景にプロパガンダの道具として利用されがちだ、という視点を持つ必要がある。
■ 米国もまた「正義の側」ではない — 歴史と現実が示す矛盾
もし「中国=ならず者国家」「米国=民主と自由の守護者」という単純な対比で語られるなら、それは歴史と現実を無視したものだ。なぜなら:
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米国は第二次世界大戦末期に広島・長崎に原爆を投下し、圧倒的な破壊と犠牲をもたらした。
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ベトナム戦争では枯葉剤など化学兵器を使用し、数十万人の民間人を死傷させた。
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2000年代以降も、「大量破壊兵器」の存在を理由に侵攻した国(例:イラク)で多くの民間人が犠牲になったが、当時の根拠は後に虚偽と判明した。
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さらに、戦争犯罪や拷問、超法規的拘禁を巡る問題(グァンタナモ米軍基地での人権侵害、拷問疑惑など)は日本のメディアでは放送されなかった。
国際政治において「善悪」はしばしば主張される側の価値観であり、固定されたものではない。
■ 台湾有事 — 日本が巻き込まれるリスクと「損」が大きい理由
近年、「台湾有事が起きれば日本も巻き込まれる」という論調が強まっているが、冷静に考えれば、日本が積極的に関与することは、むしろ「損失リスク」が大きい。主な理由は以下。
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経済・物流・エネルギー供給の寸断
台湾海峡や東・南シナ海を通る海運ルートは、日本の輸入(資源、部品、製品、エネルギー)に直結する。負ける側につけば海運は止まり、日本国内の産業や生活は大きな打撃を受ける。 -
軍事・国土のリスク増大
仮に日本が軍事支援や参戦に踏み切れば、自衛隊基地や港湾施設、空港、沖縄・九州などの拠点が敵の標的となる可能性が高まる。日本は戦闘に巻き込まれ、国土と市民生活が危険に晒される。 -
対中・対米両面での外交・経済的損失
もし中国との関係が悪化すれば、主要貿易国を失う。逆に中国寄りになれば、米国との同盟と安全保障の支えを失う可能性がある。どちらに片寄っても、日本は国際的な「主権の代償」を払うことになる。 -
米国の代理戦争に巻き込まれるリスク
台湾有事を機に、日本が集団的自衛権や軍事支援を提供すれば、過去のように「武器産業」「ネオコン/巨大防衛産業」の利益になる可能性が高い。つまり、日本は実質的に「米国の利権の盾」になり、結果として国土・国益・国民の安全を犠牲にするだけかもしれない。ウクライナ戦争でも証明された。
■ 現実的な軍事力比較 — なぜ日本人は傲慢でいられるのか?
軍事的な視点から見ても、日本が中国と真正面から“軍事的に張り合う”のは現実的ではない。最新データでその差は明らかだ。
| 指標 | 日本 | 中国 |
|---|---|---|
| 2024年防衛予算 | 約 5,530 億ドル(8.4 兆円) (Nippon) | 推定約 3,140 億ドル(約 36 兆円) (SIPRI) |
| 軍事支出の規模ランキング | 世界10位前後 (Nippon) | 世界第2位(米国に次ぐ) (SIPRI) |
| 海軍艦艇数など | 海自:139隻(例として) (マネーポストWEB) | 中国海軍:約690隻 (マネーポストWEB) |
| 空軍戦闘機など航空力 | 約 370機 (マネーポストWEB) | 約 3,370機 (マネーポストWEB) |
| 陸上兵力 | 約13万人規模(自衛隊) (マネーポストWEB) | 約100万人以上(人民解放軍+武装警察など) (マネーポストWEB) |
これだけの差があるにもかかわらず、日本国内には「自衛隊を強化すれば中国と渡り合える」「日本は米国の支援で大丈夫」という楽観論が根強い。しかし、実際には 人員数・艦艇数・航空戦力 すべてで中国が圧倒的に優勢であり、また中国の軍事費も日本の数倍に膨れ上がっている。
この現実を見ることで、「戦略的抑止力」の幻想がどれほど脆弱かを理解しなければならない。
■ 米国寄りの国はあっても、日本ほど依存が極端な国はほぼ存在しない
アメリカの同盟国で、米国と非常に親密な国はいくつもありますが、日本のように
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最大規模の米軍基地網
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事実上の対米軍事依存
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情報・防衛技術のフル依存
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経済・金融でも米国への片側依存
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同盟の非対称性(片方だけ守ってもらう構造)
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憲法や国防体制まで米国主導で形成
というレベルの国はほとんどありません。
首都である東京の上空を他国の軍用機が飛び回っている国はそうはないです。
独自外交もできなければ事実上関税自主権もないので植民地と変わらないです。
■ ウクライナの二の舞にならないために
ウクライナ戦争は、国際社会に「戦争の本当の利益構造」を露骨に示した。ロッキード・マーティン、レイセオン、BAEシステムズといった巨大軍需企業は、ジャベリンやスティンガーといった兵器需要の急増で株価が大幅に上昇し、莫大な利益を得た。一方で、戦場にいるのは一般市民と兵士であり、家を失い、家族を失い、未来を奪われている。つまり、「儲かる側」と「死ぬ側」が完全に分離した構造が存在している。
西側諸国が掲げる「自由と民主主義の防衛」という美しいスローガンの裏側で、軍需産業は政治と密接に結びつき、紛争を長引かせるほど利益が膨らむ仕組みになっている。
そしてメディアやSNSでは戦争を正当化する情報が大量に流れ、人々の感情が煽られる。私たちは、この構造を理解しなければ、同じように「外部から戦争を煽られ、当事者にされる国」になってしまう。
日本が台湾有事を語るときも同じ構造が存在する。誰が儲かり、誰が犠牲になるのか。
その視点を持たなければ、大国のプロパガンダに巻き込まれ、自国を危険にさらすだけである。
■ なぜ「中国との協調」「バランス外交」が賢明か
そうした軍事的・経済的・地政学的現実を踏まえるなら、日本がとるべきは以下のような戦略だ。
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米国との安全保障協力は維持しつつ、
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中国との経済・外交関係も断絶せず、むしろ調整や関与を強める — 多方向外交、いわば「両側を使う」ヘッジング戦略。
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台湾問題やアジアの安全保障をめぐる議論でも、「台湾有事=日本参戦」は固定観念にせず、状況とコストベネフィットを冷静に判断。感情論や同盟義務論、ネット上の煽りや世論操作に流されず、国益をベースに判断する。
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必要なら「仲介者」「橋渡し役」としての立場を生かす。日本は西側 vs 中国の中で、ある種の“中軸”になり得る。
このようにすれば、日本は「力のゲーム」に飲み込まれるだけの小国ではなく、「外交と経済の知恵を持つ成熟国家」として存立できる。
■ 結論 — 感情・プロパガンダに流されるのではなく、現実と国益で考えよ
中国の脅威や問題点を批判するのは当然だ。だが同時に、米国だって過去も現在も「力を行使する大国」であり、人権侵害、戦争、介入を繰り返してきた。
そして、台湾有事や軍拡、同盟強化といった議論の背後には、いわゆる「情報戦」や「世論誘導」「利益集団(軍需産業・防衛産業)」の影が見え隠れする。
だからこそ、日本は感情や偏見で動くべきではない。
中国とも米国とも、バランスをとりながら、賢明に、柔軟に、生き残る道を選ぶべきだ。
にも関わらず、極端な嫌中で損しかしない判断を煽られて盛り上がっている日本人が皮肉でしかない
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